なんとなく受けた心理テストに打ちのめされることになった。
そもそも心理テストも占いも血液診断もMBTIも、その手の性格分析は一切信じていないのだ。しかしYOUTUBEを流し聞きしていた中で行われたその心理テストの結果はこうだ。
「○○を選んだ人は、自分が信じているものや価値観と、違う意見をもつ人間を見下す傾向にある」
まさに最近私が自身の欠点であると思う一つの傾向。そのままズバリと言い当てられた。
打ちのめされない人間など、どこにいようか。
「YABUNONAKA」 金原ひとみ
あらすじ: ある女性による「性加害の告発」をきっかけに、編集者・作家・その家族・告発した人された人の関係が入り交じり、互いに振り回し、振り回されて、SNSも通じて社会にまで影響が広がっていく。 登場人物 8人の視点からそれぞれの言い分・主張を描き、真相とは正義とはいったい何なのか。SNSやマッチングアプリ、MeToo運動…世界の急激な変化に戸惑い、苦しめられる人間たち。この社会で生きていくためにはどうすればよいのか。
主要人物の一人である作家 長岡友梨奈。
彼女はまさに、冒頭の心理テストが示すような「自分が信じているものや価値観と、違う意見をもつ人間を見下す」強烈なキャラクター性の持ち主だ。
しかし私の中には、善悪の判断をし、悪を徹底的に潰さなければならない、間違っているものを排除し世を正さなければならないという、それはもう悪のような正義感が渦巻いているのだ。つまり私のいう多様性とは、私が認められる多様の中でのみ機能する多様性のことであり、そこから外れる女性を殺した者であったり女性を搾取する者であったり子供を殺したり搾取する者であったりはどんなに残酷な刑にかけられ殺されても構わないむしろそうしてもらわないと気が済まないという反社会的な怒りがあるのだ。
文藝春秋「YABUNONAKA」金原ひとみ (P.33)
世は正されるべきである。
皆、怠けることなく勤勉に働き、欲に負けず、他者には優しくする一方、自分には厳しく成長のための努力を惜しまない。人を敬い、侵害せず、協力していけば、戦争も格差もなくなり世界は平和を実現することができる。
その理想が、信念が、強さが、周囲の人間を巻き込み、なぎ倒し、破壊していく。
悪と戦え、なんてこんな口がねじ曲がりそうなことを言わなくてはならない私の身にもなってほしい。どうしてこんなことを言わなくちゃいけないの?あなたは本当に人間なの?(中略)良心がないだけじゃなくて、あなたには魂もないんじゃない?信念も理想も持たない、社会、政府、資本主義という実態のないものに踊らされているだけの傀儡なんじゃない?(P.297)
一人の死をきっかけに、長岡友梨奈とその娘伽耶は、全く違う方向に思いを発展させていく。
そして友梨奈は破滅の道を進んでいくことになる。
物語に登場する人物は皆、自分の主観で話し、どれも少し主張がズレていて、少し嫌な感じがして、それでいてどの人物にも少しずつ共感する。中でもこの、長岡友梨奈という人物の個性は強く、書評や感想を見る限り、どの読者の印象にも残り、その多くが苦手意識を持っているのだけど、私は一番共感してしまった人物なのだ。
ところで、冒頭の心理テストだけど、私が占いや心理テストの類に興味がない理由の一つとして「結果として挙げられたり指摘される特性は、実は誰にでも当てはまる性質でしかない」という話がある。「大胆に見えるが、実は小心者」とか「人見知りだが、一度信頼すると忠誠心が厚い」などといった結果は、大体誰にでも少しは当てはまるだろう。体調不良の原因に「ストレス」を挙げられて「いや、現代人でストレス抱えてない人間いねーよ!」と突っ込むのと同じである。
つまり長岡友梨奈のような「自分が信じているものや価値観と、違う意見をもつ人間を見下す」人間性って、誰にでもある側面の一つなのでは?
ちなみに感想を読む限り、女性は長岡友梨奈に、男性は木戸悠介に自己投影してしまう人が非常に多い印象でした。こわいこわい。



コメント