ババヤガの夜 王谷昌

小説

ディズニー映画にいわゆる「お姫様」が登場しなくなって久しい。

女性は女性らしく男性は男性らしく、女性の幸せは王子様との幸せな結婚などといった価値観が過ぎ去り、性別にかかわらず、自分の意志や夢に向かって戦っていくことこそ「主人公」であるべきだからだ。

この潮流を踏まえて変化していったディズニー作品は、それぞれに評価が分かれ賛否両論あるものの(いわゆる「お姫様」に憧れることは、そんなに悪いことなのか?)他の作品に影響を与え、エンタメを牽引していっている。

あらすじ : 暴力を唯一の趣味とする主人公・新道依子は、その喧嘩の腕に目を付けられ、暴力団内樹會会長の一人娘・内樹尚子の護衛を任される。正反対の性格に最初はいがみ合う二人だが、依子の過酷な生い立ち、尚子の運命や秘密を知った二人の間には、深い絆が育まれていく。

ババヤガ

タイトルのババヤガとは、スラブ民話に登場する魔女だそうだ。

バーバ・ヤーガ(Ба́ба-Яга́、Baba Yagaバーバ・ヤガーとも)は、スラヴ民話に登場する魔女Crone)。『竜王と賢女ワシリーサ』をはじめとした各種の民話で語られるほか[1]、芸術分野ではムソルグスキー作曲の組曲『展覧会の絵』の1曲「バーバ・ヤーガの小屋(鶏の足の上に建つ小屋)」で知られる。森の中で鶏足付きの家に住み、子供たちを食べることで知られ、悪役だけでなく良い役でも登場する[2]

バーバ・ヤーガ – Wikipedia

主人公の依子は幼少期を祖父母と過ごし、祖父から格闘技術を、祖母からはいろいろな民話や物語を教わったと回想する。「ババヤガ」も祖母から聞いた話のようだ。

「鬼婆はいろんなことをして、最後は退治されたり感謝されたりするんだけど、婆ちゃんの締めはいつも同じだった。『あんたも心のきれいな優しい娘になれば、鬼婆みたいな優しい人でも助けてくれるよ』

(中略)でも、私は本当は鬼婆になりたかった。そっちの方が面白そうだから。」

河出文庫「ババヤガの夜」王谷昌 P89

ババヤガは、見た目は恐ろしい魔女のような外見をしているものの、一般的な「悪者」ではなく、困っている人に知恵を授けたり、親切なお姫様を助けたりする一面も持ち合わせている。

「鬼婆の方が面白そう」

そう回想する依子に、尚子は深く共鳴する。

ディズニー映画のキャラクターといえば、お姫様の人気がまだまだ根強いが、悪役も同じくらい人気が高い。近年ハロウィン時期になると「ヴィラン」として、テーマパークを乗っ取り、イベントを盛り上げている。

善悪や道徳を超えて、彼らにも、何とも比べることのできない魅力があるのだ。

しかし今、新道の全身は震えていた。喜びに。四十年ぶりの暴力に。(P184)

歳をとっても、普通の人のふりをしてても、ずっと燃えてた。力が。力を奮いたいっていう気持ちが。化け物だよ。でも、それが正解だったのかも(P189)

「お姫様」ではなく「悪役」になりたがる人がいる。

きれいに着飾るのではなく、力を存分に使うことで喜びを感じる人がいる。

多様多様と言われ続けても、まだ根強く残る固定概念をぶち壊す、爽快なバイオレンス&ミステリー作品でした。

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